Introduction
母と娘の60年にわたる「絆」――中国と日本をつなぐ戦争の歴史を今に伝え、問いかける
“今と未来、奈良と世界を繋ぐ”映画製作プロジェクト「NARAtive2020」から生まれた日中合作映画『再会の奈良』の監督・脚本を手掛けたのは、中国出身のポンフェイ監督。ツァイ・ミンリャン監督の現場で助監督・共同脚本などを務め、ホン・サンス監督のアシスタントプロデューサーも務めた経験を持つ新鋭だ。歴史に翻弄された「中国残留孤児」とその家族がたどる運命、互いを思い合う気持ちを、2005年秋の奈良・御所市を舞台に切なくもユーモア豊かに紡いだ本作は、金鶏百花映画祭、東京国際映画祭ほか国内外の映画祭での上映を経て、日中国交正常化50周年の節目となる2022年についに日本劇場公開を迎える。
奈良を舞台に日中の魅力あふれる才能が集結
本作のエグゼクティブプロデューサーを務めるのは、『あん』(15)、『朝が来る』(20)を手掛け、なら国際映画祭のエグゼクティブ・ディレクターでもある奈良出身の河瀨直美と、『長江哀歌』(06)、『罪の手ざわり』(13)など中国映画「第六世代」を代表するジャ・ジャンクー。国際的に注目される2人が手を組んだ本作は、負の歴史を踏まえ、さらに今なお残る分断と不寛容の事実を突きつけながらも、日中の国境を越えた親子の愛と絆で、一筋の希望の光を差し入れる。
麗華探しを手伝う元警察官の一雄を演じるのは、『哭声/コクソン』(16)、『MINAMATA-ミナマタ-』(21)など近年益々世界的に認知度を高めている國村隼。養女探しに奔走する養母には、『妻の愛、娘の時』(17)ほか中国を代表する女優ウー・イエンシュー。シャオザーには中国で注目の若手女優イン・ズーと、物語の鍵を握る男に河瀨監督と過去3度組んできた永瀬正敏が友情出演を果たし、シャオザーの元恋人には、劇団EXILEの秋山真太郎など日中を代表する実力派俳優の共演が実現した。
Story
2005年、中国から陳ばあちゃんが、孫娘のような存在のシャオザーを頼って一人奈良にやって来る。中国残留孤児の養女・麗華を1994年に日本に帰したが、数年前から連絡が途絶え心配して探しに来たというのだ。麗華探しを始めた2人の前に、ほんの偶然の出会いでしかなかったはずの一雄が、元警察官だったという理由で麗華探しを手伝うと申し出る。奈良・御所を舞台に、言葉の壁を越えて不思議な縁で結ばれた3人のおかしくも心温まる旅が始まる。異国の地での新たな出会いを通して、果たして陳ばあちゃんは愛する娘との再会を果たせるのか――。
Cast
國村隼 吉澤一雄 役
1955年11月16日、熊本県生まれ。1981年に『ガキ帝国』で映画デビュー。主演作『萌の朱雀』がカンヌ国際映画祭(第50回)カメラ・ドール賞を受賞。以降、国内外の映画を中心にドラマ、舞台、ナレーションなど幅広い活躍を見せる。リドリー・スコット監督作『ブラック・レイン』(89)、クエンティン・タランティーノ監督作『キル・ビルvol.1』(03)、ローランド・エメリッヒ監督作『ミッドウェイ』(19)、『MINAMATA-ミナマタ-』(21)、『KATE/ケイト』(21)など数多くの海外作品にも出演。近年の主な出演作品に『かぞくいろ-RAILWAYS わたしたちの出発-』(18/𠮷田康弘監督)、『アルキメデスの大戦』(19/山崎貴監督)、『ステップ』(20/飯塚健監督)、『樹海村』(21/清水崇監督)、『騙し絵の牙』(21/吉田大八監督)、『映画 太陽の子』(21/黒崎博監督)、Netflixオリジナルドラマ『全裸監督1・2』(19・21/武正晴総監督)など話題の映画、ドラマなど様々な分野で幅広い役をこなす。’22年は『ちょっと思い出しただけ』(2月11日公開/松居大悟監督)などが控えている。ナ・ホンジン監督の韓国映画『哭声/コクソン』(16)で、第37回青龍映画賞の男優助演賞と人気スタ-賞をダブル受賞し、2016 APAN STAR AWARDS特別俳優賞を受賞する。
ウー・イエンシュー(Wu Yanshu/吴彦姝)陳慧明 役
1938年生まれ。1959年に『流水歓歌』で映画初主演を果たし、その後は舞台で活躍し、1990年代にテレビドラマに進出。2003年までは中国シャンシーシェン演劇研究所に俳優として所属。人民大会同にて中国語の西洋風オペラLiu Hula公演のため周恩来首相より招かれる。その後北京に移住し、映画俳優としてのキャリアをスタートさせる。2016年に、『本がつなげる恋物語(Book of Love)』(日本未公開)で第53回金馬奨の最優秀助演女優賞にノミネートされ、2017年に『妻の愛、娘の時』でも同賞と香港電影金像奨の最優秀助演女優賞にノミネートされる。2017年、『搬迁(Relocate)』での演技が評価され、中国版アカデミー賞と呼ばれる金鶏奨で最優秀助演女優賞を受賞。本作『再会の奈良』では、2021年ミンスク国際映画祭で最優秀女優賞に輝いた。彼女が演じる優しい佇まいの中に凛とした強さが見える中国人女性像は唯一無二であり、今や中国映画界に欠かせない俳優である。その他の出演作に岩井俊二監督『チィファの手紙』(20)、『花椒の味』(19)など。
イン・ズー(Ze Ying/英泽)シャオザー/清水初美 役
中国の若手新人女優。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスにてソーシャルポリシー、犯罪 学の学 位を取 得 。201 5 年に、ポンフェイ監 督の長 編 デビュー作『 Un d e rg ro u n d Fragrance』で女優デビューを果たす。同監督の長編2作目である『ライスフラワーの香り』(17)では主演を演じ、監督・脚本のポンフェイと共に共同脚本家も務めた。また、北京青年映画祭にて主演女優賞と脚本賞にノミネートされる。
永瀬正敏 寺の管理人(剛)役
1966年生まれ、宮崎県出身。1983年、映画『ションベン・ライダー』でデビュー。『息子』(91)で日本アカデミー賞新人俳優賞・最優秀助演男優賞他、計8つの国内映画賞を受賞。その後日本アカデミー賞は、優秀主演男優賞1回、優秀助演男優賞2回受賞。 海外作品にも多数出演しカンヌ国際映画祭・最優秀芸術貢献賞『ミステリー・トレイン』(89)、ロカルノ国際映画祭・グランプリ『オータム・ムーン』(91)、リミニ国際映画祭グランプリ、トリノ映画祭審査員特別賞『コールド・フィーバー』(95)では主演を務めた。台湾映画『KANO』(15)では、金馬奨で中華圏以外の俳優で初めて主演男優賞にノミネートされ、『あん』(15)、『パターソン』(16)、『光』(17)でカンヌ国際映画祭に3年連続で公式選出された初のアジア人俳優となった。近作は『赤い雪』(19)、『ある船頭の話』(19)、『ファンシー』(20)、『星の子』(20)、『名も無い日』(21)、『茜色に焼かれる』(21)他。2018年芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。
秋山真太郎 福田健二 役
1982年7月8日、長崎県長崎市生まれ。2009年から正式に劇団EXILEのメンバーとなる。ドラマ・映画の『High&Low』シリーズや、『ドクムシ』(16)などに出演。錦織良成監督の『僕に、会いたかった』(19)では、出演だけではなく、プロデューサー・共同脚本としても制作に関わった。また、2019年7月には『一年で、一番君に遠い日。』を出版し、小説家デビューを果たすなど多様な分野で活躍している。
監督・脚本:ポンフェイ(鹏飞/Pengfei)
1982年12月29日、中華人民共和国、北京市生まれ。フランス・パリの映画学校、Institut International de lʼImage et du Sonの映画コースを卒業。2006年中国へ帰国後、2008年からアシスタントとして映画製作を開始。台湾で活動する映画監督ツァイ・ミンリャンのもとで経験を積む。同監督の『ヴィザージュ』(09)で助監督を務め、第70回ヴェネツィア国際映画祭審査員大賞を受賞した『郊遊<ピクニック>』(13)では助監督・脚本も手掛けた。その他、ホン・サンス監督の『アバンチュールはパリで』(08)には、アシスタントプロデューサーとして製作に参加している。長編デビュー作『Underground Fragrance』(15)は、ヴェネツィア国際映画祭ヴェニス・デイズ部門にて初上映され、シカゴ国際映画祭では新人監督コンペティションでゴールデン・ヒューゴ賞を受賞。2016年1月にはフランスで劇場公開された。また、長編2作目となる『ライスフラワーの香り』は、2017年ヴェネツィア国際映画祭のFedeora賞にノミネート、同年の平遥国際映画祭では中国新人監督部門で最優秀作品賞に選ばれる。2018年のなら国際映画祭にて観客賞を受賞し、NARAtive2020映画製作プロジェクトの監督に選出され、日本の奈良を舞台に本作『再会の奈良』を手掛けた。
河瀨直美 Kawase Naomi
映画作家。生まれ育った奈良を拠点に映画を創り続ける。一貫した「リアリティ」の追求による作品創りは、カンヌ映画祭をはじめ国内外で高い評価を受ける。代表作は『萌の朱雀』『殯の森』『2つ目の窓』『あん』『光』など。2020年度公開作品『朝が来る』は、第73回カンヌ映画祭公式セレクション、第93回米アカデミー賞国際長編映画賞候補日本代表。第44回日本アカデミー賞7部門優秀賞受賞。D J 、執筆、出演、プロデューサーなど表現活動の場を広げながらも故郷奈良にて「なら国際映画祭」を立ち上げ、後進の育成にも力を入れる。東京 2020 オリンピック競技大会公式映画総監督、2025年大阪・関西万博のテーマ事業プロデューサー兼シニアアドバイザー、バスケットボール女子日本リーグ会長を務める。プライベートでは野菜やお米も作る一児の母。
ジャ・ジャンクー(賈樟柯/Jia Zhangke)
1970年5月24日、中華人民共和国、山西省汾陽生まれ。映画監督・脚本家・プロデューサー。1997年に北京電影学院の卒業製作として、『一瞬の夢』を監督し、1998年ベルリン国際映画祭で最優秀新人監督賞を受賞、各国の映画祭でグランプリを獲得し、国際的に大きな注目を集めた。主な作品は『プラットホーム』(00)や、第63回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した『長江哀歌』(06)、第66回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した『罪の手ざわり』(13)、『山河ノスタルジア』(15)など。2015年にはカンヌ国際映画祭にて中国人で初となるゴールデン・コーチ賞を受賞。中国映画界では、映画監督「第六世代」の代表格としても知られている。
撮影:リャオ・ペンロン(廖本榕/Liao Pen-Jung)
1949年8月8日、台湾生まれ。『河』(97)、『Hole-洞』(98)、『楽日』(03)、『西瓜』(05)、『黒い眼のオペラ』(06)、『ヴィザージュ』(09)や第70回ヴェネツィア国際映画祭にて審査員大賞を受賞した『郊遊<ピクニック>』(13)ほかツァイ・ミンリャン監督の撮影監督を多く手掛けている。リー・カンション初監督作『迷子』(03)では、2003年金馬奨の最優秀撮影監督賞と最優秀台湾映画製作者賞を受賞し、同監督『Help Me Eros』(08)では、2008年アジア・フィルム・アワードの最優秀撮影賞を受賞した。ポンフェイ監督では長編2作目『ライスフラワーの香り』(17)と本作『再会の奈良』の撮影監督を務めている。
音楽:鈴木慶一
1951年8月28日、東京都生まれ。1970年頃より音楽活動を開始し、1975年に結成したバンド「ムーンライダーズ」のボーカルとして活躍。バンド活動と並行して、アーティストやCMなどへ多くの楽曲提供を行っている。映画音楽の分野では、『座頭市』(03)を始め『アウトレイジ』(10)、『アウトレイジ ビヨンド』(12)、『龍三と七人の子分たち』(15)、『アウトレイジ 最章』(17)など北野武監督作品の音楽を多数手がけ、『座頭市』、『アウトレイジ 最終章』では、第27回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞、『アウトレイジ ビヨンド』では、2013年アジア・フィルム・アワードの作曲賞にノミネートされている。また、俳優として映画やドラマにも出演している。